「横浜・大口の洋服お直しアトリエ&教室 チカラ・ボタン」訪問
服を大切にしたいと思いますが、流行もあり、年齢と共に体型が変わったり似合わなくなったり、シミがついてしまったり、そのままでは着られなくなってしまうことが多々あります。自分で直せればいいですが、やり方の分からない人やミシンなどの道具のない人も多く、また、難しい素材や作りで、素人には手に余る服もあります。
そんな時頼りになるのが、「お直しのプロ」です。
お直しのお仕事について、「チカラ・ボタン」のアトリエを訪問し、代表の鵜飼睦子さんにお話を伺いました。 (文責:ビッキさん)
作業する鵜飼さん
【現在のお仕事】
メインはお直しだが、教室もやっていて、お直し6に対して教室4くらい。
すそ野を広げておきたいので、WEB発信をしている。お直し例の発信などによって、新規のお客さんが増えている。
【教室】
教室は、1人か2人で個別対応。お直しはやりたいものが様々で、コースを決められない。お直しの力をつけることを目指すのか、作品の完成を目指すのか、人によって違う。
全く何も知らない人も多い。パターンのトレースの仕方や布のたてよこ、トレースして縫い代をつけて、合印をあわせるなど、洋裁の本に書いてないことが分からない。
お直しの仕事をしている人も、スキルアップに来る。同僚には60~70代の人が多いので、仕事の話をしたくて来る人もいる。
効率よく配置された作業場
【フランチャイズのお直し】
お直しの職場は人手不足で、納期など時間に追われ、ほぼ1人体制。パンツの丈つめ以外は、本社・工場に送る。受付で伝票に記入したことが全てで、受け付けた人と作業する人が別になる。お客さんの意図がちゃんと伝わらないことがある。素材も様々。
私も、勤めている時に受付の仕方で失敗したことがある。作業で失敗したこともある。
【お直しの仕事】
独立して、最初から最後まで関われるようになった。お客さんの思い通りに仕上げ、満足度を上げられる。そのためにも、受付ではしっかり時間をかけて、話を聞きフィッティングして、どうするか決める。
お直しは技術の仕事と思われがちだが、サービス業だと思う。気持ちが大事。要望に従って、服作りの禁じ手でも時にやる場合がある。こういうことは、個人でないとできない。
修理はその人なりのスタンスがあるので、いろいろな引き出しをもって、できるようにする必要がある。「着られるようになればよい」と「きれいにやってほしい」では違うので、さまざまな経験をして引き出しを増やすようにしている。人のやっていることを見たり、流行のモードも見たりする。
【服に対する考え方】
服に対する考え方が様々になった。2、30年前の服を直したいという人が来る。お金もかかるが、素材もよく、店頭には売られていないものが手に入る。必要に迫られて来る一人暮らしの男の人もいるが、一方で、ボタン1個とれたら捨てる人もいる。
お直しを持ってくる人は、その洋服が好きで来る人が多い。お直しを活用している人の方がおしゃれ。ユニクロやギャップには、直してまで着たい人はあまりいない。
鵜飼さんの勝負服:レースの生地とニット地の組み合わせがユニーク
【これからのお仕事】
お直しの仕事に若い人が少なく、職場で育てることもしないので、下の世代が育たない。教室は、人を育てる意識もある。お直しの仕事全体のレベルアップをしたい。
お直しは、洋服を大事にすることで、それは、人を大事にすることだと思う。お直しを通して、住みやすい世の中になってほしい。
【見学参加者の意見】
木田:服飾の学校でも、デザイン中心で服作りはメインでなくなってきている。縫製の仕事もなくなり、4,5年前から就職先としてお直しの仕事を紹介するようになってきた。しかし、就職しても続かない。
メルカリが盛んになっている。消極的にモノを大事にしている。無意識にやっているので、大事にすることを意識できると積極的になる。レナウンではレンタルを始めた。
考え方は違っているが、選択肢が増えている。服を大事にする仕方がいろいろある。
佐藤: まず、メーカーの生産の仕方を変えてほしい。作るときに、壊すときのことを考えてほしい。作り過ぎて新品が廃棄されるということは、その分高いものを買っているということ。
【鵜飼睦子さんのプロフィール】 和裁学校を卒業して東急ハンズに就職。80年代は高度成長期ですごく忙しく、仕事は面白かったが身体を壊して1ヶ月休職。13年間勤めたが退職し、一生の仕事としてお直しの仕事に就いた。お直しを始めて20年。アトリエは4年前から。10年ほど前からホームページを開設した。監修の産業編集センター「手ぬいでちょこっと洋服お直し」は、最近第6刷重版が出た。 |
鵜飼さんオリジナルのリクチュールくらぶのマスコット“りくちゅ”クリップ